ヒュッテほし×りんご栽培 自然の力を生かすこと・生かされること
「りんごそのものを味わっているみたい。なんだろう、この美味しさは!」
手前味噌かもしれませんが、それがGiFT NORiKURAのりんごのソルベを初めて味わった時の率直な感想でした。この美味しさには、ジェラート職人の腕も去ることながら、りんごそのものに何か秘密がありそうです。
そんなわけで、
今回は、GiFTの看板ジェラートのひとつ、りんごのソルベの材料であるジュースを提供いただいているりんご農家さん、ヒュッテほしさんを訪ね、りんご栽培のお話を伺ってきました。
山好きのお父さんが始めたりんご栽培
ヒュッテほしさんは、塩尻市でりんご栽培をしながら、乗鞍高原で宿業を営んでおられます。
出迎えてくださったのは、ヒュッテほしのご主人保科弘行さんと奥様の喜美さん。
お二人の穏やかな雰囲気と、
「良かったらどうぞ」
と奥さんの喜美さんに出していただいた自家製の干しりんごに、インタビューの始まる前からほっこりと癒されてしまいました。
そんなほしさんが本格的にりんご栽培を始められたのは、三十数年前。
栽培品種はサンふじ。現在85歳になる弘行さんのお父さんとお母さんが、試行錯誤しながら、おいしいりんご栽培のしかたを模索されてきたそうです。
弘行さん
「親父はもともと山が好きでね、日本山岳会信濃支部に所属して、ヒマラヤへの登山 計画があったとき参加するつもりだったんです 。結局家族に大反対されて、諦めたんですけどね。で、それを諦める代わりに山仲間が集まれるような山小屋を作りたいという親父の願いで、かねてから縁のあった乗鞍に、この宿を建てたんです。」
その当時、まだ主流ではなかった「草生栽培(そうせいさいばい)」を取り入れたのも、お父さんの山での経験や、自然との関わりから得られる、ある想いが影響しているようで……。
りんごも自然の一部
草生栽培とは、果樹園に下草を生やす園地の管理法のこと。除草剤や耕すことで草を枯らすと土の中の細い根が傷んだり、土が乾きすぎてしまって果実の味が悪くなるなどといわれています。最近は ごく当たり前になった栽培方法なんだそうです。
弘行さん
「でも当時は畑に草が生えていると、『畑に手をかけていない怠け者』とか言って周りから色々言われる時代だったんです。それでも山好きの親父の中には、雑草であれ、生きている自然の力を活かしたいというか、そういう想いがあったんでしょうね。」
なるほど。りんごを育てる土も、そこに生える草も、そしてりんごも自然の一部。自然の摂理のなかで、共に生き、そして生かされている理由がある。そして、自然の力を生かし合うからこそ美味しくなる。なんだか、自然界の妙を感じずにはいられません。
葉を摘むタイミングはりんご次第
ほしさんの栽培されているりんごの品種は「サンふじ」。 実に袋を掛けずに日光に当てて育てる品種。だから名前に太陽を意味する「サン」がつくのだそう。 でも、葉の陰になってしまう実により多くの日光を当てて色づきを良くするための「葉摘み」という作業も必要になってくるのです。その葉を摘むタイミングにも、おいしいりんごになる秘密が どうやら あるようです。
喜美さん
「うちのりんごの収穫は、ゆっくりなんです。農協に出荷するとなると、葉を摘んで、収穫して、出荷してっていう農協ペースに 合わせなければならないのだけれど、うちは直接販売だけだから、 葉を摘むタイミングも、収穫する頃合いも、りんごが美味しくなる様子をじっくり見ながらなんです。」
確かに、買う立場からすると、その時期に新しいりんごの品種が 次々と出てくれば、できるだけ早く出始めの品種を食べてみたくなるものです。 ほしさんのお話を伺っていると、それってなんだか、売り手の都合に踊らされている部分もあるのかもしれないなぁと反省しました。
喜美さん
「葉を摘むタイミングが早いと、その分 葉っぱから実の方へいく栄養も少なくなっちゃうでしょ。そうすると、糖度に違いが出てくると思ってて。うちのりんごは、じゅうぶん実が成熟してから、葉を摘む ようにしようと思ってます。だから周りに比べるとすごくゆっくりしたペースなんだけど、りんごの糖度はあがるんじゃないかな? 」
弘行さん
「 美味しいといわれるサンふじの糖度は大体15度以上。 うちのサンふじの糖度もそれ位かそれ以上だろうとの自負はあるのですが、でも、そんなゆっくりした作業のペースだから、うちが葉摘みの作業をしていると、周りから『まーだ葉を摘んでるのか!』って思われてると思うんですよね。 もうその頃、周りの農地はすっかり綺麗になっちゃってるから (笑) 。」
周りに流されることなく、りんごの美味しくなる頃合いを見計らいながら、ゆっくりとりんごと向き合うほしさん。言葉を交わし合うことはなくても、まるでりんごと対話をしているかのよう。ほしさんに栽培されたりんごは、幸せなりんごだな、それが甘さや美味しさに現われてるのかもしれないなと、お話を伺いながら思うのでした。
畑を通して自然と向き合う
とはいえ、乗鞍で宿業を営みながら、塩尻でりんご栽培をするというのは、行き来だけでも大変なはず。さぞ大変なお仕事のサイクルなのだろうなと思ってお聞きすると……。
弘行さん
「もちろん、私たちも畑作業に行きますが、今年85歳になるじいちゃんとばあちゃんが、張り切って畑をやってくれていてね。」
喜美さん
「もう毎年、収穫が終わると『来年はできないよ』なんて言うんだけれど、春になると自然と動き出しちゃうの。なんだか、畑は生きがいというのか、畑を通して自然と向き合っていると、どこかから力が湧いてくるみたいで(笑)。」
85歳で現役の働き手だなんて!と驚いてしまいましたが、ここまでのお話を伺って、どこかちょっと納得する部分も。土に触れ、美味しい作物を育て、それを自分自身や、それを求めている方に届けるという、シンプルだけど尊いお仕事を淡々と続けてこられたからこそ得られる健康の秘訣が、あるのかもしれないなと。
食べてくれるお客さまの反応がダイレクトにかえってくる喜び
宿業とりんご栽培で忙しくされているほしさんファミリー。様々なご苦労があるなかで喜びを感じるのは、 やはりなんと言っても、手塩にかけたりんごを収穫するとき。そしてまた、収穫したりんごや、手をかけて作ったお料理をお客様が美味しいと言ってくださること、それがダイレクトにかえってくることなのだそうです。
喜美さん
「顔の見えるお客様の反応がダイレクトにかえってくるのは、嬉しいですね。りんごそのものもそうだけれど、ゼリーにしたり、コンポートにしたり、 干しりんごをつかって何か作ったり……。宿でも年中りんごをお出ししているので、日々お客様から反応をいただけるんです。」
弘行さん
「畑ではもろこしなんかも育てているけれど、やっぱり採ってその日のうちに茹でたもろこしは、 翌日、翌々日に茹でたものとは 甘さがまるで違うんですよ。そういう美味しいものを美味しいときに味わってもらえるのは、大変だけど嬉しいことですね。」
美味しいものを、美味しいときに、美味しい形でいただくこと。簡単そうで、都会ではなかなかできない贅沢なことですね。
喜美さん
「りんごは、やっぱり毎年同じ味とはいかなくて、当然自然条件によって味が変わります。毎年お付き合いしているお客様だと、 そういうちょっとした味の違いも『今年はこういう味なんだね』と気づいてくださったり、自然な受け止め方をしてくださる方がいて、それもまた嬉しいし有難いです。」
栽培する年の自然条件のなかで、与えられた命を目いっぱい生き、実っていくりんご達。今回のインタビューを通して、そのりんごの実りにできるだけ自然に寄り添い、自然と対話しながら、お客様の元へとりんごを届けていくほしさんファミリーの姿が浮かび上がってきました。そのベースにあるのは、美味しいものを美味しい形で届けたいというほしさんの真っすぐな想い。人と自然の力を生かし合うことで生まれる、貴重なギフトのような気がします。 なるほど、美味しいわけですね。
ほしさんのりんごが待っている
「美味しくて嬉しかったです!」
ほしさんは、GiFTでソルベに姿を変えたりんごを味わって、そんな感想を寄せてくださいました。美味しいものを美味しい形で届けたいというほしさんの願いに、 GiFTを通して少しでも寄り添えているのだとしたら、嬉しいことだなと思います。
今、塩尻にあるほしさんのりんご畑では、11月中旬ごろから始まる収穫に向けて、りんご達がスタンバイしているようです。今年は、春先の霜で一時心配な面もあったそうですが、今のところ生育は順調だそう。ほしさんのりんごに会いたい!なので、私も収穫時期に改めて、畑へうかがう約束をし、宿を後にしました。
収穫の様子は、またその頃に。
弘行さん、喜美さん、貴重なお話をありがとうございました。
GiFTでは、ソルベとジュースに姿を変えた、ほしさんのりんごが、いつでも待っています。
そして、ほしさんのりんごは、11月の収穫期から1月頃まで出荷されるそうです。毎年人気のため、現在ご注文は11月末頃までのご予約の方が優先となっているそうですが、加工品用でしたら対応いただけるそうです。ご希望の方は、直接 お電話で ほしさんへお問い合わせください。
また、りんごジュースやジャムなどは、ほしさんの公式WEBサイトからお取り寄せできます。詳しくは、ほしさんのWEBサイトへ。
温泉民宿 ヒュッテほし
〒390-1512 長野県松本市安曇4085-75 乗鞍高原
TEL. 0263-93-2502
FAX. 0263-93-2580
http://www.huttehoshi.com/
(記事:Ayako Momiji)