信州蜂蜜本舗 次世代につないでいく信州のはちみつ

昔から自然豊かな信州は、はちみつの宝庫と言われています。その証拠に、平安時代に天皇に献上していたことが古い書( 平安時代の法令集「延喜式」 )に記されています。古くから信州産のはちみつは格式が高く、伝統もあり、品質が良かったことが、歴史的にも裏付けられているのですね。

GiFT NORiKURAでは、お砂糖を使わずに、信州産のはちみつを使用して、自然な甘さを引き出しお作りしているジェラートがあります。

『りんごのソルベ』『アルプスブルーべりー(with honey)』。これらは特に「果物そのものを味わっているようで美味しい!」と好評です。その美味しさは、果物のそのもののフレッシュさや美味しさによるところも大きいと思いますが、もう一つ、大事な要素があります。それは、素材の美味しさや甘さを引き立てている『はちみつ』です。

今回はGiFT NORiKURAにはちみつを提供してくださっている信州蜂蜜本舗さんを訪ね、お話をうかがってきました。

創業は昭和3年 信州で営む養蜂業

私が訪れたのは、乗鞍高原から街へ下りて1時間のところにある、 信州蜂蜜本舗本店 。松本市中央の公園通りにお店がある、 昭和レトロな書体の看板が目印のお店です。当日は、三代目の深澤博登さんにお話を伺いました。

お話を伺った常務取締役の深澤博登さん

深澤さん
「創業は昭和3年(1928年)なので、今年で創業91年になります。三代目と言っても、親父も健在で職に就いているので、完全に代替わりをしたわけじゃないんですよ。」

そう話す深澤さんは、信州蜂蜜本舗の常務取締役を務めておられます。波田村(現在の松本市波田)出身の深澤さんのお祖父さんが養蜂業を始められたそうです。創業当初のお話をうかがってみると……。

創業時の店舗
昭和初期のお店

深澤さん
「創業したての頃は他の仕事と兼業でやっていましたが、段々と本格的になっていきました。昔はハチの巣箱を貨車に積んで、花の開花を追って日本の南の方(鹿児島)から 北の方(北海道) へ と移動しながら養蜂をしていた時代もあります。」

花を追って旅する蜂蜜屋さんだなんて……、人の暮らす場所を前提に仕事をするというよりも、花の営みと、花の営みに預かるハチの営みを主にして、それに合わせるように生活をしていたという、 その養蜂の在り方にとても興味がわきました。
ですが、次第にその移動しながらの養蜂スタイルは時代に合わなくなっていき、現在、信州蜂蜜本舗さんでは長野県内でのみ、養蜂をされているそうです。

現在のお店

深澤さん
「現在は松本市内の『内田』の河川敷など自然の豊かなところで養蜂を行っています。だいたい春先からハチが活動し始めて、11月の終わりごろまでの7~8か月が養蜂時期になります。今(取材時:10月末)は、そろそろ活動が低下してきている頃ですね。もうすぐ冬の準備が始まります。」

現在は、主に地元松本の自然条件の中で、ハチを見守り、養蜂を行っているのですね。

ハチを巡る環境の変化

話変わって、養蜂というと、どうしても私は気になることがありました。それは農薬の問題(※)です。 農薬がハチに与える影響についても伺ってみました。

(※)1990年初めごろからヨーロッパでミツバチの大量失踪が始まり、2007年春までには北半球のハチの4分の1が消えたと言われています。日本でも2005年ごろからミツバチの大量死が始まりました。 その原因として、ネオニコチノイド系農薬による影響が大きいと言われています。

深澤さん
「やはり、農薬の影響はひしひしと感じています。ハチに限らず、田んぼ周りから昆虫自体が少なくなっていますよね。自分の子どもの頃には当たり前にいたタニシやゲンゴロウ、イナゴやトンボなども。ネオニコチノイド系農薬については、科学的根拠に諸説ありますが、 浸透性や残効生、神経毒性があり、ハチを狂わせてしまうと言われています。巣に戻れなくなるハチもいるし、巣に戻ったとしても、巣内でその毒性をばらまいてしまうという。」

EUでは、ハチへの毒性を認め使用が禁止されているネオニコチノイド系農薬ですが、日本では逆に 農薬残留基準が緩んでいるという、なんとも歯がゆい状態にあります。

農家さんも収量を上げないとやっていけないし、農薬の問題は難しいと語る深澤さん。今、ハチを巡る問題は、農薬だけでなく、海外からの流通によってもたらされるダニの害も無視できないものになっているそうです。時代の変化の中で、ハチを巡る環境も変化しており、思うところも色々とおありのようでした。

ハチと共に「面白い!」にまっすぐ

深澤さんは、 お祖父さん、お父さんが営んでこられた養蜂業を受け継ぐ形で現在の仕事に就いておられます。ご自身は、この仕事に就くことに、もともと抵抗が全くなかったと言います。理由をうかがってみると、

深澤さん
「自分で自分のやりたいことが試せるから。そういう意味で自営業って面白いですよね。もちろんやるとなると責任は伴ってくるけれど。」

と至ってシンプルです。そのお言葉通り、深澤さんは現在様々な面白い取り組みをしておられます。
その一つが、街中で行う屋上養蜂です。

深澤さん
「2015年から、松本の井上百貨店さんの屋上で養蜂を始めました。松本ミツバチプロジェクトのHPに詳しく載っていますが、松本の市街地には緑豊かな公園があったり、花木がたくさんある。だから、市街地にも養蜂をできる環境がじゅうぶんにあるんです。屋上養蜂は、世界的にはパリのオペラ座の屋上などから始まりましたが、日本では2006年に銀座のとあるビルの屋上で始まりました。その日本で初めて屋上養蜂を始めた方と、 全国の養蜂の会合で出会ったのが、松本で始めたきっかけです。松本の市街地でも、屋上で養蜂したら楽しそうということで、井上百貨店さんに話をもちかけて始めました。」

屋上に設置された巣箱
※松本ミツバチプロジェクトHPより
巣箱から取り出したところ
※松本ミツバチプロジェクトHPより

最初は2箱の巣箱から始め、現在では5箱で養蜂を行っているそうです。そこでできたはちみつは、 パッケージやコラボ商品も時間をかけて考えられ、 2016年より「城町はちみつ」として販売が開始されました。

城町はちみつ
※松本ミツバチプロジェクトHPより

ちなみに、これまでコラボした商品は18~19種類にも及ぶそうです。カステラやレアチーズケーキ、パンケーキやチョコレートのほか、最近はクラフトビールともコラボして商品が開発されたのだとか。どれも話題を呼ぶ商品となっています。

※松本みつばちプロジェクトについて詳しくは、公式HPへ

信州蜂蜜本舗のこれから

新たな試みにチャレンジしたり、次々と繰り出されるコラボ商品。深澤さんは、このお仕事を本当に楽しんでおられるし、誇りをもってされているんだなということが、伝わってくる気がします。
今、そしてこれから、深澤さんはどんなことを考えておられるのでしょうか。

深澤さん
「この地元信州の豊かな自然を守って、次世代につなげていきたいという想いがまずあります。自分だけでは難しいですが、行政などとも組みながら、実のなる木を増やし、蜜のとれる花を増やして、はちみつの収量を増やしていくことが、私のしていくことかなと思っています。」

なるほど。植物とハチには深いパートナー関係があります。 ミツバチなどの虫たちは、蜜や花粉をもとめて花を訪れ、そのときに種子の結実に欠かせない受粉を行います。植物はミツバチなどの虫に来てもらって受粉の手助けをしてもらい、その代わりにミツバチは蜜と花粉を手に入れています。

生態系の中で、植物とハチとの互いの働きがうまく機能した結果として、はちみつがある。深澤さんのお話をうかがいながら、養蜂のお仕事は、生態系のあるべきサイクルを見守り、自然を次世代につなげていく大切なお仕事なのだな……と、ハッとさせられるのでした。

はちみつという自然の恵みを次世代につないでいく

ひとさじのはちみつに、どれだけのハチの働きがあるでしょう。
以前、私は、一匹のミツバチが一生かかって作るはちみつの量は、わずかティースプーン一杯と聞いたことがあります。そしてまた今回、深澤さんにお話を伺うなかで、養蜂家さんがハチを見守る労力を思うと、はちみつの貴重さやありがたさに改めて気づかされます。
自然の営み、そして人と自然の営みによって得られる「はちみつ」という恵みに感謝の念がふつふつとわいてきます。

GiFTのジェラートにも使用している、様々なお花の蜜を集めた「百花蜜」

インタビューの中で、「次世代に豊かな自然をつなげていきたい」と話してくださった深澤さん。自然界のシステムを陰で支えるハチを見守り、その自然の営みのなかで得られる恵み「はちみつ」を媒介に、人と自然をつないでいきたいという深澤さんの思いがじわりと伝わってきました。
そしてまた、GiFTで信州蜂蜜本舗さんのはちみつを使用させていただく意義も、ひしひしと感じます。

店内には、アカシア・りんご・そばの蜂蜜など様々な種類の蜂蜜が並んでいる

信州蜂蜜本舗さんの「蜂の子」は、幼虫時、はじめはローヤルゼリーで、その後蜂蜜と花粉で育て、栄養価が特に高いと評判

余談ですが、私の息子は、信州蜂蜜本舗さんのはちみつが大好きで、私が止めないとずっとなめ続けてしまうほどです(笑)そのことをお伝えすると、

深澤さん
「嬉しいですね。特にお子さんには本物を味わってほしいなという想いがあるので。小さいお子さんに本物のはちみつの美味しさを知ってほしいし、美味しいと感じる味覚を育ててもらいたいなと思います。」

はい。今後はその貴重さをより深く伝えながら、ありがたく&美味しくこれからも味わいたいと思います(笑)深澤さん、貴重なお話、ありがとうございました!


GiFT NORiKURAでは、信州蜂蜜本舗さんの百花蜜を使用して、りんごのソルベとアルプスブルーベリー(with honey)をお作りしています。

りんごのソルベ
りんごのソルベ
アルプスブルーベリー
アルプスブルーベリー(with honey)

どちらも、ほんのりとした優しいはちみつの甘さが、 素材の美味しさを引き立ててくれています。
お砂糖を控えているという方など、健康志向の方にもとても好評です。
はちみつの奏でる自然の甘さを感じながら、ハチの営みに想いを馳せて、味わってみられてはいかがでしょう。

また、信州蜂蜜本舗さんのはちみつは、実店舗の他、オンラインショップでも販売されています。はちみつ以外にもローヤルゼリーや プロポリス、蜂の子なども購入できますので、気になる!という方は下記HPへどうぞ。

信州蜂蜜本舗
〒390-0811 松本市中央1-8-6(公園通り)
TEL.0263-32-2608
FAX.0263-36-8938
http://www.shinshu-honey.com/

(記事:Ayako Momiji)

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