Norikura Pioneer Roasters つながりをサポートするコーヒー

コーヒーを買う時って、どんな基準で買いますか?
豆の産地?価格?イメージ?それとも……?

乗鞍には、アメリカから移住してきた夫婦が営むコーヒー焙煎所があります。
2018年からOPENしたその焙煎所の名前は「 Norikura Pioneer Roasters 」。彼らが毎週水曜日に焙煎して届けてくれるコーヒーは、香りが高くてとても美味しいと評判です。

GiFT NORiKURAでは Norikura Pioneer Roasters で焙煎されたコーヒー豆を毎週仕入れ、焙煎したての豆を挽いて、コーヒーをお出ししています。日本のみらず海外のお客様からも、「What a wonderful coffee!」などと絶賛されることもしばしば。

彼らがどんな風に焙煎しているのか? そもそも、なぜ乗鞍でコーヒー焙煎をしているのか?
Norikura Pioneer Roastersのマカリスターさんを訪れて、お話をうかがってきました。

「 Leave it better than you found it 」 から始まった

セツさんとハナさん
Norikura Pioneer Roastersのセツ・ マカリスターさん(左)とハナさん(右)

訪れたのは、Norikura Pionner Roastersを営むマカリスターさんの自宅兼コーヒー焙煎所です。
出迎えてくれたのは、夫の セツ ・マカリスターさんと、妻のハナさん。
この日は焙煎のある水曜日でした。

セツさん
「今日はこれから焙煎が始まるので、今は焙煎した豆を入れる瓶を用意しているところです。」

リユースの瓶を準備
瓶を準備しているセツさん(手前)と注文を確認するハナさん(奥)

セツさんは、もともと大のコーヒー好き。それもそのはず、コーヒー文化が根強いアメリカのオレゴン州出身です。日常にコーヒーが欠かせない、そんな文化の中で育ってきました。でも、自分の手で焙煎したのは、乗鞍で生活するようになってからのことだそうです。

セツさん
「毎年の誕生日に、コーヒー好きの私のため、ハナがコーヒーに関わるグッズを贈ってくれるんだ。ある年に、彼女がコーヒーを焙煎する道具を贈ってくれたことがあった。その時、自分で焙煎したコーヒーは、すごく美味しい!と思ったんだ。」

そんなセツさんとハナさんは、乗鞍が大好きで、常々、この乗鞍が元気な地域になるための助けになりたいと考えています。現在セツさんは「 #アルプスの感動を日々の暮らしに 」を目指して、乗鞍を含めたアルプス山岳エリアの地域づくりに関わり、乗鞍の未来を住民と一緒に考えるワークショップをファシリテートしています。また、アルプス山岳エリアの地域観光プロモーションやデザインの仕事もしています。そして、ハナさんはいつもセツさんをサポートしています。

仲睦まじいセツさんとハナさん。いつも思うのですが、二人が共にそこにいるだけで、互いを思いやり、支え合っているのが伝わってきます。

彼らには5人のお子さんがいてパパ・ママ業も忙しい。この日は2人で焙煎を。
いつもはその時に手の空いた方が焙煎しているそう。

セツさん
「この乗鞍の環境が大好き。ここは春・夏・秋・冬の4つの季節の違いを楽しめるし、自然と共に生きているのを実感できる。それが自分に合っていると思う。」

ハナさん
「私も同じ。特に私は雪が大好きなの。それに火を焚くのも大好きなので、冬が長い乗鞍は、私に合っているのかもしれない。」

そう話すセツさんとハナさん。
彼らと同じく移住組の私は、 実は彼らとは友人でもあり、乗鞍のプロモーションに関わる仕事を一緒にする間柄なのですが、二人が地域のためにと働く様子を間近で見ていると、その一生懸命さにいつも驚かされたり、励まされたりしていました。「乗鞍が好き!」というだけで、こんなにも地域のためや、誰かのために働けるものだろうかと、感動することも。

セツさん
「乗鞍に住んで15年になる。この地域は、もっと良くなれるはずだと、ずっと思っていて。ただ自分が満足するだけで終わらずに、周りの人の助けになることをしたいと、いつもハナと話しているんだ。」

ハナさん
「『 Leave it better than you found it』という言葉があるように、自分がここに住んでいる間、ここの暮らしを少しずつでも良くしていきたいと思っているし、周りの人を励まし続けたいと思っている。」

コーヒー豆の具合を見ながら焙煎しているハナさん
※セツさん撮影

そんな彼らの考え方が、コーヒー焙煎の仕事につながっていきました。

自宅兼焙煎所
自宅を拡張してつくったスペースにある焙煎所。この窓からは乗鞍岳も見える。

Norikura Pioneer Roastersを始めた理由と大切にしたいこと

ハナさん
「自分たちに何ができるだろうと考えた時に、乗鞍の人たちの暮らしに身近にあるもので、日々の生活を楽しむきっかけになるようなものを提供できたらと思って。」

セツさん
「それで、コーヒータイムっていいなと思ったんだ。ほんのひとときだけど、元気になれる時間だから。時には人が集まるきっかけにもなる。美味しいコーヒーを飲みながら、そんな風に人と人がつながったり、よりよい地域にしていくために話し合う時間をもてたらいいなと。人と自然がつながったり、人と文化をつなげることができる、そんな役目も担えると思ったんだ。」

焙煎が終わった豆を取り出すセツさん。1kgずつ焙煎機でローストされる。

『つながり』をサポートするための美味しいコーヒーを。
それが、Norikura Pioneer Roastersを始めた理由だそうです。

Norikura Pioneer Roastersを始めるにあたって、二人でじっくりとコンセプトを考えたそうです。そうして事業のなかで大切にしたいこととして考えたのは、

①Personal…個人を大切にすること、個人と個人のつながりを大切にすること
②Fresh…毎週、定期的に、焙煎したての新鮮なものを
③Simple…パッケージなど、シンプルを基本に

この3つのことを、事業を営んでいく上での様々な判断軸・価値軸にしているそうです。

Personalを大切にするコーヒーを提供したい

例えば豆選びにも、それが表れています。彼らが焙煎する豆として選んだのは、東ティモール産のフェアトレード・オーガニックコーヒー豆。

コーヒー豆の生産者について話してくれるお二人

Norikura Pioneer Roastersのコーヒー豆は、東ティモールの生産者を支援する NGO(PARCIC) から仕入れています。現地で生産者協同組合をつくり、また良質のコーヒーをフェアトレードで買い続けることで経済的自立への足がかりにしようという取り組みをしているNGOです。つくる人も飲む人も互いに支えあう社会、持続可能な暮らしを目指したこのNGOの取り組みが、Norikura Pioneer Roastersの『Personal…人を大切にする』という考え方に親和性があると考え、取引を始めることにしたそうです。

コーヒー麻袋
コーヒー豆が入った麻袋。
袋には 生産者協同組合COCAMAU(コカマウ)の名前が書いてある。
※セツさん撮影

ハナさん
「実は、この豆を生産している環境は、標高 約1500mのマウベシ都というところで、世帯数は600ほどの地域。乗鞍と環境が似ている。」
「このコーヒーを1杯を飲むと、1食分(1人)の支援をしていることになるの。」

コーヒー豆の背景を知り、そこに思いを馳せながら、安全で安心なコーヒーを飲む。自分の日ごろのちょっとした選択で、誰かの助けになる。そういう選択=買い物をしたいなと、私も思います。

乗鞍で焙煎したFreshなコーヒーを味わってほしい

Norikura Pioneer Roastersでは、毎週 火曜日までに注文を受けて 水曜日に焙煎をすることに決めているそうです。そこには、彼らが大切にしたいことの「Fresh」につながる理由がありました。

焙煎したてのコーヒー豆。辺りにいい香りが立ち込める。

ハナさん
「やっぱり、焙煎したての豆は美味しさが全然違うから、できるだけ新鮮なものを定期的に届けて、味わってもらいたいと思っているの。」
「時間が経つとコーヒーに含まれる油が酸化して古くなってくる。それだと味も香りも悪くなってくるし、健康的じゃない。焙煎してからできれば1週間以内、長くて2週間以内の豆を届けて飲んでもらいたいなと思って。」

それは本当に彼らの言う通りで、焙煎したての豆でドリップすると、ふわーっとした泡立ちと共に芳醇な香りが広がる。香りだけで深く癒されてしまうほど。そして何より美味しさが違うのです。(コーヒーがどちらかというと苦手な私でも、その違いがわかるほどです。)

焙煎機に熱風が送り込まれ、温度や豆の具合を見ながらローストされる
※セツさん撮影

また、コーヒー焙煎をする機械には種類がいくつかありますが、Norikura Pioneer Roastersの焙煎機は『エアロースター』という種類。熱風で焙煎するために、摩擦による豆の傷みが少ないのだとか。乗鞍の清涼な空気を送り込んで焙煎されるコーヒー。そのフレッシュさは、乗鞍の空気と相まって、ここでしかできない特別なものになるのです。

まるで焙煎機の中で踊っているかのようなコーヒー豆
※セツさん撮影

未来のために Simpleでありたい パッケージフリーのコーヒーを

Norikura Pioneer Roastersは、『Simple』を大切にする考えのもと、パッケージフリーでコーヒー豆を提供することにしました。焙煎されたコーヒー豆は、繰り返し使えるガラス瓶に入れて届けられます。

セツさん
「使い捨ての袋に入れて販売すれば、もっと観光客の方にも買ってもらいやすくなるのは分かっている。でも、私たちのコーヒーを買うことでゴミが増えてしまうのは、望むことではないなと思って。」

ハナさん
「私たちが味わってもらいたいのはあくまでもコーヒー豆。だから使い捨てのパッケージ代にお金をかけるのは、買う側も作る側も、もったいないことだと思って。」

今は「パッケージがいいから」とか、「インスタ映えがするから」といって、商品そのものというよりも、見栄え重視の消費傾向があるような気がします。商品を手に取るきっかけとして機能するパッケージ。それはデザインの仕事もするセツさんなら、たやすく作れてしまうことだったかもしれません。でも、持続可能な地域づくりをいつも考えている彼らは、あえてパッケージのないパッケージをデザインしたのでした。

豆の販売に繰り返し使っているガラス瓶
※セツさん撮影

セツさん
「初めてのお客さんには、ちょっと説明しないと理解しにくいところがあるんだけど、初めての人には、まず1200円で瓶を買ってもらっているんだ。そして、次の注文のときに瓶を引き取り、またその瓶を洗って、再利用するようにしていて……。」

買う側からすると、初めて豆を買う時に、瓶代として一度だけ1200円+豆代を払います。豆を買い続ける間はずっとその瓶を使い続けられるので、2回目からは豆代のみの支払いで済みます。
※もし、もう買わないよという場合は、瓶を返せば800円で瓶を買い取ってくれるそうです。

なるほど、このやり方であれば無駄なゴミは出ません。持続可能な事業の在り方を考えた、彼らの主義が一貫しています。 買う側にとっても、日々の購買行動の中で未来のためにできる、大切な選択ですね。

それぞれの注文ごとに重さを計って瓶詰めされたコーヒー豆

何より、 焙煎された豆が ガラス瓶に入って並んだその様は、とっても美しい。
「Simple is the best」 という言葉がぴったりです。

人はみんなPioneer

セツさんとハナさんが始めた Norikura Pioneer Roasters。まさに、彼らはコーヒーを通して乗鞍をよりよくするための「Pioneer(開拓者)」なのだなと感じます。でも……とセツさんは言います。

セツさん
「私たちだけじゃない。人はみんなPioneerだよ。特に乗鞍は、昔の人たちが、この山深い土地を開拓して開拓して今がある。だからその開拓精神が息づいている場所だと思う。現状のままい続けることに安心するのではなくて、自分たちの暮らしをよりよくするために、知恵を出しあい、互いに助けあい、変わり続けることを恐れず進んでいく、そういう文化が乗鞍にはあると思うんだ。」

ハナさん
「そうして進んでいく途中途中で、おいしいコーヒータイムをもって、人と話したり、いい時間を過ごすことが、きっと前に進んでいくエネルギーになると思うし、その助けに、私たちはなりたい。」

Norikura Pioneer Roastersの焙煎所にて

開拓者のためのコーヒー。それはまた、乗鞍に限らず、どこに住んでいたとしても、誰にでも必要なものなのかもしれません。自分の日々の生活をよりよくするために、人との関係をよりよくするために、住んでいる地域をよりよくするために……。

今、あなたが開拓しているものは何ですか?それはどこへと向かっていますか?

Norikura Pioneer Roastersのコーヒーは、そんな問いかけをしながら、私たちにそっと寄り添ってくれるコーヒーなのだなと感じます。

乗鞍という豊かな土地で焙煎するコーヒーの芳醇な香りとともに、今日もまた、この人やあの人へと彼らの想いが届けられていきます。

Norikura Pioneer Roasterのコーヒー豆
※セツさん撮影

GiFT NORiKURAでは、毎週彼らから仕入れるフレッシュな豆を使い、また乗鞍のおいしい水をつかってコーヒーをお淹れしています。

注文いただいてから豆を挽き、丁寧にお淹れする「ハンドドリップ」は、お出しするまでに少しお時間をいただきますが、その間にほんのり店内に漂ってくるコーヒーの香りを感じていただきつつ、スローなコーヒータイムを味わっていただけます。 ハンドドリップコーヒーは中煎りと深煎りからお選びいただけます。

Norikura Pioneer Roastersの豆を挽いて淹れたコーヒー「のりくら焙煎」

のりくら焙煎」は中煎りの豆を使っています。こちらも混雑時でなければ、ご注文後に豆を挽いています。(混雑時でも豆を挽いてから1時間以内のものでお淹れしています)

※深煎り…長い時間をかけて焙煎したもので、香ばしいロースト香や焙煎による独特の苦みが味わえます。
※中煎り…深煎りよりも焙煎時間が短く、酸味・苦み・甘みのバランスがとれた一般的なローストです。

水出しコーヒー「Cold Brew」

そしてまた、長い時間をかけて水からゆっくり 抽出する水出しコーヒー「Cold Brew」も人気です。ドリップしたものを急冷するアイスコーヒーとは違い、水から抽出すると お湯に溶け出しやすい苦みや渋みなどの成分が、あまり出てこないと言われています。そのため、水だしのコーヒーはまろやかで 甘味やコクが味わいやすいのです。

時間をかけてゆっくりとじっくりと水から抽出される

それから、実はGiFT NORiKURAでは、「Going Zero Waste」を掲げて、Norikura Pioneer Roastersと同じ想いでパッケージフリーを心がけています。そのため、テイクアウト用の紙カップ等はご用意がありません。もしテイクアウトをご希望の場合は、無料でタンブラーを貸し出ししています。(タンブラーは500円で購入も可能)

まだ聞きなれない、もしくは珍しいパッケージフリーの商品提供スタイルだなと思われる方もおられるかもしれません。でも、持続可能な未来のため、ゴミを出さない選択をここ乗鞍から始めてみてはいかがでしょうか。

カフェではなく、Norikura Pioneer Roastersからダイレクトに豆を購入ご希望の方は、乗鞍高原内での引き取りが可能な方に限り、注文を受け付けているとのことです。ご興味のある方は、下記に記載のアドレス宛にメールをお送りください。

Norikura Pioneer Roasters
Email: coffee@norikurapioneer.com

【Price】

月2回以上のご注文の方…100g 500円
1回ずつご注文の方…100g 600円
瓶代(初回)…1200円(返却時は800円が戻る)

GiFT NORiKURAは、Norikura Pioneer Roastersと想いを共にしながら、この乗鞍の土地で持続可能な事業を営み、皆さんにコーヒーというGiFTを届けていけたらと願っています。私たちの開拓も、まだまだ始まったばかり。一杯一杯、お一人お一人に、これからも真心こめてコーヒーをお淹れします。

(記事:Ayako Momiji)

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